口腔がんとコーヒー
院長の戸谷です。
今回は、お口にできる「がん(癌)」についてお話します。専門的ではなく、ごくおおまかな話です。
癌とは本来正常な自分の細胞が、無秩序に増殖してしまう状態を言います。例えば、こけてしまい、怪我したとしましょう。怪我した部分は、その部分の組織が損傷して正常な肉や肌がなくなっています。最終的には、その傷ついた部分に細胞がよせ集まって増殖し、途中でその増殖はストップがかかり、正常な肉や肌ができあがります。ちょっと盛り上がり、そして収縮して正常な形になります。
癌はその増殖にストップがかからず、無秩序に細胞が増えてしまう状態です。つまり「秩序を乱す」細胞です。人間の集団行動においても「僅かな人」が秩序を乱しても、秩序を乱す人に多くの人が同調しなければ、その集団の秩序は乱れません。でも、その秩序を乱す人が、集団においてかなりの割合を占めるとなると、その集団は崩壊します。それと同じです。
癌細胞は、人間(集団にあたる)において大変脅威ですので、常に免疫細胞が目を光らし、癌細胞ができてもすぐに駆逐してしまいます。でもその目を逃れ、次第に増殖して数が多くなりすぎると、もう免疫細胞では駆逐する事ができなくなり、目に見える集団「癌」となるのです。
特徴として、もともと自分の細胞です。なので、がんの出来始めは「痛くない」のです。自分の組織が少し変化したものですから、初期は痛くないのが大半です。「痛くないけど、最近固まりができている」「それが何週間も続いている」「治る気配がなく、形や大きさ、色が変化している」などと感じたら、念のため口腔外科に診てもらいましょう。お口の細胞構成(専門的には「扁平上皮(へんぺいじょうひ)」という)は、食道の細胞構成と同じです。ですので、過去お口に癌ができているは食道までは特にチェックを。反対に食道に癌ができたことのある人は食道~お口までチェックが必要です。
蛇足ですが、この前阪大の口腔外科に行ったのですが、向こうの先生が「コーヒーに口腔癌を抑制する効果があることが、外国の文献に3つほど掲載されています。さすが3つも掲載されている以上は、やはりそれなりの根拠があるのでしょうね」とのこと。コーヒーは糖尿病発症抑制の効果も報告されていますし、あまり熱くしないで(熱いとお口の粘膜を損傷してしまう)、コーヒーを楽しみましょう。